東京地方裁判所 昭和37年(ワ)5118号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は(一)昭和三六年五月三〇日開講終講昭和三七年八月一二日講会日毎月一二日及び三〇日、三〇回掛一口掛金二、〇〇〇円(以下「一二日、三〇日講」という)(二)昭和三六年八月三〇日開講、終講予定昭和三九年一月三〇日講会日、毎月三〇日、三〇回掛一口掛金一、〇〇〇円(以下「三〇日講」という)の講元となり頼母子講を開始し、被告は「一二日、三〇日」講について七口加入し、第二回講会日において五口、第三回講会日において二口落札し、三〇日講については二三口加入してその第二回講会日において一三口落札し、それぞれ講金を取得し掛戻しする義務があるにかかわらず、昭和三六年一一月三〇日まで掛戻したのみでその後掛戻しをしない。原告は講元としての業務執行権に基いて被告に掛返義務の履行を求めた。
被告は原告は本件頼母子講のほか多数の講の講元となり反覆継続してこれら講会を開催し、総掛金を取得して高利で他に貸付け自己の事業として右講を運営していたものであるから、本件頼母子講は相互銀行法第三条第四条に違反し、公序良俗に反し無効で、被告は本件講の返掛金債務を弁済する義務はないと抗弁した。
原告は相互銀行法第二条第一項第一号に規定する業務は相互銀行と個々の加入者との間に締結せられる双務契約であつて組合的性質を有するものでない。本件頼母子講は講元及び加入講員多数との間に締結せられる組合類似の契約でその法律構成を異にし、同法第三条に反するものでないと主張した。
判決は原告の見解を採用し、本件講は組合類似の契約で右相互銀行法の各法条の適用はないと判断し、つぎのとおり説明している。
曰く。
「相互銀行法第三条、第四条の規定は取締規定と解すべきところ、第三条所定の相互銀行業を営むとは、自らが主宰者となり反覆継続の意思をもつて、金銭の給付等を目的とする業務をなすことを対象としたものであつて、その法律関係は主宰者と各加入者との間に契約関係を生ずるに止まり、加入者相互の間には何ら法律関係を生じないものというべきである。これを本件についてみるに、……を総合すれば、原告は飲食店を経営するものであるが、友人より勧められて自ら講元となり、講員相互間の親睦と資金の融通を得させる目的で、講員を募るとともに自己も講員の一員として各講に加入し、講員全体が一定の時期毎に開催される講会日において、各自一定の掛金を醵出し、第一回の講会日においては講元が他の講員に優先して講金を取得して茶菓等を接待し、第二回以降の講会日においては入札の方法により講金受領者を決定し、入札者の抛棄した金額を他の講員に対し加入口数に按分して割戻し、(但し、割戻金制は一二日、三〇日講のみ。)順次講員が給付を受ける等の約束で本件頼母子講を発起、設立したものであること、しかして、原告は講元として、その主張のような組織、運営方法で掛金、掛戻金の徴収、落札金、割戻金の交付、計算及び借用証の徴取、講会の召集、講員の加入、脱退等各講の業務一切を処理してきたが、被告ら既に落札した講員の中に掛戻金債務を履行しないものが出たため講金の交付を受け得ないものがあるときは、自己の負担で講金を交付して各講を存続させ、一二日、三〇日講は終講させたが、三〇日講は昭和三七年一〇月頃負担しきれなくなつて遂に中止したこと、原告は、当時他の講にも加入していたが、本件講のほかには七日、一三日講の講元をしていたに過ぎないことが認められ、証人内畠末吉の証言及び被告本人尋問の結果中、右認定事実に反する部分はにわかに措置できないし、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。右認定事実に徴してみれば、本件各頼母子講は、多数の者が共同して相互の金融を得る目的で金額の払込みをするものであるから、いわゆる組合類似の契約と認められ、原告が自己の営業として、反覆継続してこれを主宰経営していたものとは認められないから、相互銀行業を営むものとは到底いえない。
したがつて、本件各頼母子講が同法第三条、第四条の規定に違反して公序良俗に反することを前提とする被告の抗弁は理由がない。」(土田勇)